寵教師

スノウメルツと愛の巣



 大雪の翌朝、赤羽キヨラくんはカーテンを開けて、目に痛いほどの初めて見る景色に見惚れていた。寮の入口付近は早起きした教師たちが雪をかいたが、2階の裏の窓から見る銀世界は、何物にも冒されたことのない純銀だった。
「あまり雪を見たことはない?」
「うん」
「寒いのがつらくなかったら、外で直に見てみようか」
「うん」
 嬉しそうに頷いた赤羽くんがバタバタと用意を始める。
「本当に寒いからね。ヒートテックは2枚以上が基本だよ。足元も忘れずに暖めて」
「はーい」
 僕も外に出る用意をする。薄い長袖のヒートテック加工の肌着を3枚、靴下は防寒のものと毛糸のものを重ねた。タートルネックの上に厚手のセーターを着る。ボトムは内側がフリースのものだ。登山にでも行くような格好だけれど、実際それくらいのつもりでいかないと凍える。
 対して赤羽くんは、雪の装備を揃えていなかった、それくらい突然の雪だったのだ。一生懸命引き出しの中をひっくり返しているが、望みは薄そうだ。
「僕の、貸そうか?」
「あー……ありがとう、先生、貸して」
 若干僕のほうがあるけれど、僕と赤羽くんの背丈はあまり変わらない。できるだけ若々しい装備を選んであげた。僕の装備だけだとさすがに可哀想だったので、クリスマスプレゼントにしようと思っていた白いパーカーの封を切ることになった。クリスマスは雪用の靴をあつらえてあげることにしよう。
 さて部屋を出ようと思ったところで、赤羽くんの携帯電話が震えた。赤羽くんがメッセージを読み、ぱっと顔を輝かせた。
「先生、アミナが雪合戦しようって!」
「ああ、よかったね」
「よかったねじゃなくて、先生もしない?」
 そんなやりとりがあって、雪かきで筋肉痛の身体に鞭打って、雪合戦をした。柏崎アミナくんとその担任が僕たちに雪玉をぶつけるのに飽きて部屋に戻っても、赤羽くんはまだ雪で遊ぶのに夢中だ。非常に気温が低いため、雪は積もっても綺麗なパウダースノーのままだ。やっと飽きたのかと思ったら、僕の所へ来て、僕を雪に押し倒した。とても楽しそうだ、こちらまで楽しくなってしまう。それに、けしかけるにはいい頃合だ、僕は楽しそうな赤羽くんの頬に、ちゅっちゅとキスをする。赤羽くんもふざけて返してくる。僕は赤羽くんを抱えて、まだ誰にも体重をかけられたことのない粉雪の上を転がった。寮から遠くへ続く緩やかな坂を転がり、通ったままに雪が乱れ、やがて僕の目的地である平地に着いた感覚がある。赤羽くんが笑いすぎてひいひい言っている。
「……赤羽くん、いらっしゃいませ」
 ずっと目を閉じて笑っていた赤羽くんが、目を開ける。僕の背後に、幻想的なホテルが見えるはずだ。
「……かまくら?」
「雪かきのときに作っておいたんだ」
「へええ」
「入っていいよ」
「潰れないの」
「じゃあ僕が先に入ろう」
「えっえっ」
 戸惑う赤羽くんの横から起き上がり、かがんでかまくらに入る。大雪の中、担当の教師6人ほどがかりで作ったかまくらは、見た目よりずっと広いし頑丈だ。
「先生……?」
「充分赤羽くんも入れるよ、おいで」
 かまくらの中から、赤羽くんに手を差し伸べる。赤羽くんは膝歩きでかまくらに入ってきてくれる。
「意外と広い……あったかい、暑いくらい」
「さっきいっぱい運動したからね。僕はこれから、もうちょっと運動したいんだけれど……赤羽くんが服を脱いでくれるのであれば」
「……ここでするの?」
「やってみたくない?」
「……やってみたい」
 赤羽くんの好奇心につけこんでみる。赤羽くんは暑かったのか他の何かに駆り立てられたのか、僕が手袋とコートを脱ぐ間に、手袋、コート、靴と靴下を脱いだ。僕は脱いだコートを広げ、赤羽くんの脱いだものを畳んで襟の上に置いた。枕代わりだ。
「じゃあ、キヨラ、この上に四つん這いになって」
「はい」
 赤羽キヨラが言うとおりにする。僕は覆いかぶさるようにしてキヨラのボトムのボタンを外し、ジッパーを緩める。
「寒くなかったら、膝まで脱いでおいて。準備をするから」
「はい」
 キヨラは枕代わりの服に顔を埋め、両手でまずデニムパンツのみをずり下げた。下着ごしでも興奮しているのがわかり、余計に厭らしい。けれど、少し不都合だ。
「それでいいの?」
 しばらく悩んだような数秒の後に、いいえ、と答えが返ってくる。銀の部屋の中で、キヨラは下着に親指をかけ、焦らすようにゆっくりと恥部を露わにした。
「このままキヨラがイくと、コートが厄介なことになるね」
「……はい」
「だから、こういうのはどう?」
 不安そうにキヨラがこちらを振り返る。僕は微笑む。キヨラの根を雪でくるむ。
「ひゃん!」
「可愛い声だね」
 雪はキヨラの熱で溶け、滑って落ちようとする。そのたびに上から握って雪を固め直し、また溶けて滑って擦れる。
「んぁあ! ひっ……う、んんぅうっ! ……はぁぁっ」
「キヨラ、気持ちいい?」
「んんっ、つ、つめた……」
「新鮮かと思って。だめ?」
「で、でも、冷たい、から……」
「いま、どうなってるの? 萎えちゃった?」
 キヨラは右手を脚の間に回して、僕の手を押さえてくる。
「なにかな?」
「……いい、です」
「うん?」
「気持ちいい、です……」
「そっか」
 僕は満足して、雪の筒を外した。
「あぁあ……」
「嵌めたままのほうがいい? じゃあ、自分で握っていなさい。ああ、そうしたくて手をこっちにしたのかな」
 キヨラが押さえているその手を押さえ返し、その右手に雪の筒を握らせる。
「ちがっ……んっう、や、んん!」
「普段もそういうふうにして、気持ちよくなっているの?」
「だ、って、溶けて……」
「キヨラがあっつくするから溶けるんだろう」
 前はキヨラに任せて、僕はキヨラの入口に、冷たい指のまま触れた。
「ぅん! やっ、やだ、先生、冷たい……」
「あんまりやるとおなか壊すかもしれないね。でも、一個だけ入れさせて」
 キヨラの入口に、一円玉くらいの大きさに固めた雪玉を押し込む。崩れることなくつるっと飲み込んだ。そのまま滑りに任せて指も入れていく。
「やっあ、あ、せんせ、先生、入れても、溶けてっ」
「おなか痛くなったらすぐ言うんだよ。これくらいでならないとは思うけれど」
「ひっひ、あ、い、ぁあ」
 キヨラが戸惑った声を上げている。第二関節まで入れたあたりで、雪玉は溶けて無くなる。指を進めると、柔らかく温かい粘膜に包まれて、じんわりと気持ちが良い。
 気持ちはいいのだけれど、キヨラの表情が見えないのがだんだん勿体なく感じられてくる。
「キヨラ、身体、こうしようか」
 指を抜いて、交尾する馬のようにキヨラに抱きつき、体勢を変える。キヨラは僕の膝の上、僕はさきほどまでキヨラが膝をついていたコートの上に腰を下ろす。先程よりもキヨラの動向がわかる。その間にキヨラが雪の筒を落としてしまう。
「あ……せんせ」
「うん? ごめんね、急だったかな」
 キヨラの手が行き場をなくして後ろ手に僕の腰を這う。見えていないので手探りだ。僕の脇腹にキヨラの手が触れ、僕は冷たさにびくっと身体を震えさせることになった。
「あっ、せんせ……? ごめんなさい」
「ふふ、んーん、いいよ、もっと触って。びっくりしてしまった」
 キヨラの手が僕の脇腹を遠慮がちに撫でる。
「ふっ、ふふ、くすぐったいなあ」
 キヨラは少し笑って、冷たい手で面白がるように僕をわざとくすぐった。僕は生理的な反応を隠さず、びくびくと跳ねるままにした。そうするとキヨラが楽しそうだからだ。
 しばらく遊んでいると、キヨラが笑いの中に眉を寄せた表情を混ぜてきた。
「せんせ、なんか、じわじわ、する」
「ん? どこ?」
「……雪で、ずっとしてたところ」
「……ああ、しもやけになってしまったかな」
 指は入れたまま、興奮のせいだけでなく赤くなっているキヨラに左手で触れる。
「んっあ、あっあ」
「あっつくなってるね、手が温まって気持ちいいよ」
「せ、んせ、擦って」
「かゆくなってしまったかな」
 僕は言われるとおりにキヨラを扱いた。いつもより反応が激しい、身体全体が大きく跳ねる。
「んっ、う、ふぅう、ん」
 僕の膝の上でキヨラは身体をよじるほど感じてくれている。
「キヨラ」
 再び後ろの指も動かす。中の冷たさはもうなくなっていた。代わりに、溶けたばかりの雪解け水がキヨラの愛液と混じり、さながら欲情した女性器のような音がする。
「ううんっ……ん、んんう」
「何か言いたげだね? 教えて」
 キヨラは首を横に振る。快楽への反応なのか返事なのか測れず、僕は再度キヨラを呼んだ。
「……中も、ひりひり、してて」
「触らないほうがいい?」
 キヨラが珍しく直接的な言葉を使った、それくらい耐えがたいのだろう。奥まで入れて、掻き回して、ぐちゃぐちゃにしてください。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 僕は確認のため、キヨラを抱き寄せ、高まった身体を知らせた。キヨラが手を後ろの僕のほうに回し、熱を手のひらで押すように刺激してくる。その手がジッパーを下げ、僕を取り出してくれる。冷えた手が、ぎこちなく僕を扱き始める。
「……キヨラ、雪、もうちょっと入れさせて」
 小さな雪玉を作り、開かれたキヨラの脚の間にみっつほど入れる。
「んぁ、や、やだ、つめた……」
 そしてキヨラの身体を持ち上げ、沈ませるように僕を埋め込む。先に当たる冷たい感触が気持ちいい。
「ひあああ……んんあ、あっあ、やだ、やだ、気持ち悪い、せんせ」
「気持ち悪い?」
「溶けて……出てきて……」
「ああ、そっか」
 気持ち悪いのを気持ちよくすべく、僕はキヨラを軽く持ち上げ、腰を使って激しく出入りする。じゅぷじゅぷと水があふれる。中の冷たい塊がなくなってもなお繰り返す。
「あっあっあっ、ひっんぁ、んっあっ」
「もう溶けて、全部出たんじゃない?」
 奥まで収めてひと息ついた。キヨラは肩で息をしている。しかしながら満足はしてくれないようで、腰を揺すっている。
「もっと、もっと擦って、先生」
「んーとね」
 僕はふっと思いつき、パウダースノーを手にとる。そして、キヨラを突き上げながら、冷えた手でキヨラの先端に雪の塊を押しつけた。
「んはぁんんっ」
 キヨラは声を絞り出し、雪の塊に向けて射精した。予想通り、雪はぶちまけられた熱で溶けてしまった。
 溶けた雪を払い、もう数度、キヨラを突いた。終わらない絶頂に、キヨラはまだ精液を断続的に押し出している。
「はああんっ、んあぁんん、ひあんっあ、ああ、あ……」
「……ちゃんと、イけた?」
 息を切らしながら、キヨラが頷く。まだ肩が時折震えるけれど、エクスタシーは過ぎたようだ。
「キヨラ、見てごらん」
「ん……せんせ……?」
 キヨラが目を開けると、キヨラの精液が飛び散った通りに地面の雪が溶けている。キヨラが頬を熱くしたのが分かった。
「いっぱい、出たみたいだね?」
「先生……」
 キヨラが恥に耐え切れず、身体を起こそうとする。その浮きかけた身体を再び元に戻させると、自然とまた深くまで埋まる。
「んんうっ!」
 絶頂の直後できつく締まっている中にまた押し込まれた棒の感触は、キヨラにもういちど雪を溶かしたくさせるのに充分だったようだ。
「キヨラ、また硬くしているの?」
「……もういっかい、中、してほしい……」
 それもいいな、と思うけれど、さすがにかまくらで第二ラウンドは寒い。僕は興奮しているからいいとして、キヨラの体温がだんだん下がって、太腿に鳥肌まで立ち始めている。
「んーと……じゃあ、いったん服を着よう」
「続きは……?」
「着たらしよう」
 僕はゆっくりキヨラから撤退する。絶頂の味を思い返すように中が震える。
 コートや靴を身に付けると、キヨラが物欲しげにこちらを見ている。
「オーラルで、してあげるよ」
「俺も、先生の舐めたい」
「じゃあ、シックスナインでもしようか。キヨラ、横になれる?」
「はい」
 キヨラが横になる。コートは防水なので背中が濡れることもないだろう。
 雪で、未だてらてらと光る先程の残滓を拭い、キヨラの上に陣取る。普通は逆なのだろうけれど、僕にはやりたいことがある。
 キヨラが待ちきれないというように僕をしゃぶり始める。僕もキヨラに口をつけた。いちど達したそこは、達した味をきちんと味わえた。
「んっ、ん、んく、んっ、んぐ」
 僕に舐められて感じながらしゃぶるのは美味しいかい? 口が塞がっているので僕は言えないけれど、言ってあげたら頷くのだろう。
 キヨラの口淫は今では慣れたもので、気持ちがいい。吸い方も、舐め方も、含み方も、随分上手になった。僕はお礼の気持ちを込めて、雪を口に詰め込み、キヨラを深く招き入れた。
「く、ん、んんん、んー、んく、ん」
 雪ごしでも、キヨラが脈打っているのがよくわかった。
 ふっと思いついてキヨラから口を離す。キヨラはまだ懸命に口を動かしていた。僕は近くにあるつららを取り、キヨラの先端に押しつけた。
「んっぐ、んん」
「痛い?」
 キヨラがほんの少し首を縦に振ったようだ。けれど数ミリ尿道に入ったところで、キヨラは限界を迎えた。鼻から高い声が上がる。つららの隙間から雪と違う色の白がほとばしり、服が汚れないようにと少し角度をつけていたため、周囲の雪が溶けるにとどまる。つららもだいぶ溶けた。満足した僕は、キヨラに言う。口に出すよ。キヨラは痙攣しながら頷いた。僕はその刺激で絶頂に達した。キヨラが全部飲んでくれる。お利口な子だ。
 キヨラの上からどいて、かまくらの天井を見上げる。キヨラも息を整えながら、天井を見た。起床した学生たちの声で外が騒がしくなってきている。みんなに見つかる前に帰ろうか。

Copyright(C)2017 Maga Sashita All rights reserved. designed by flower&clover
inserted by FC2 system