第十六章



 奇怪な死だった。
 チルは陰部からの出血多量、ヨルは肌近くの血液凝固により石のようになり、チシオは「かたつむり」しか言わなくなり食事をとらず栄養失調、メイロは肺が凹み呼吸困難、ヒカルやミズキ、ユナは傷口からの敗血症で、ラカツキは目が覚めなくなり、亡くなった。そのあと、ミコが自殺した。マサキはミコをウイング・ロスの再発だと言っており、マサキ自身は勉強のためにミロ国に行くらしい。
 ルシフェルの配信で、大体の事情は世界的に発信されていた。だがラカツキの死により、ルシフェルという配信者のチャンネルは閉鎖された。情報を得られるいちばん近い有力者のハヤテがトチ国に派遣されるという。国民は歓迎している。

***

 トチ国の皆さま、ミロ国E・Mハヤテです。
 この度、トチ国を、ミロ国の領土とします。
 あの事件は、マツロ騎士団長から、忘れてはならないものだと伺いました。
 妖精の国に、いたずらに踏み入ってしまったこと、心苦しく思います。
 これからは、この件に関わったかたがたをお祀りする神社を建設します。
 皆さまに安心、安全な暮らしをしていただくために、力を尽くさせてください。

***

「なにがあったんだろうな」
「なんとなく、わかります」
「というと」
 ハナビと私は喫煙所に居る。
「根本が、変わったんでしょう。今お持ちのその剣も……」
「ああ、ただの木の棒だ」
「この顔の呪いが解けたのと同じ、何かの源が変わったんですよ。体感的にわかります」
「そうなのかもしれないな」
 私はふっと思い、ハナビに煙草を差し出した。
「私、これはもういらないから、よかったら吸ってください」
「……変わったんですね。煙草、お好きでしたでしょう」
「私のは、あの子の言葉だよ」
「受け取ります。国に帰れば、王を護れなかった護衛として、処刑されますが。当然です、実の妹を失っても、いや、いちど縁は切れたんですが、それでもあそこに行ったら絶対に死ぬって思ったら、身を隠してしまったんですから」
「思い詰めすぎだ。美味い煙草だよ」
「では、最期に有難く」
 私は空を見上げた。
 あの子を殺したのは、私のような気がしている。
 なにもかもがなくなった。
 歩むも止まるも自由だ。
 煙草をやめたのは、歩みだろうか。





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