イガカシ

その何パーセントが



 一緒にお酒を楽しみたいひとが居る。
 ただ、僕はお酒を飲んだことがない。いや、なくもないのだけれど、色気のあるお酒の飲み方をしたことがない。
 どうにも、あの頃を考えると、ぞっとする。ちゃんとアルコールに慣れておかないと、僕は、あのひとの前で、あなあな、声が大きくなって、顔が赤くなって、獅子脅しになって、あまつさえ機能不全に、逆に『起きてみたら僕のアパートでなぜか裸で一緒に寝ている』ということに、キングオブキングはこともあろうか気を遣わせてしまうことになりそうだ。
 僕は免許証を探した。どの服で撮ったのだったか。
 見つけて、まったく同じ服を着た。黒のスキニーと、白いセーターだ。もっと着飾りたいような気もするけれど、それよりもここは、道を踏み誤りそうな怪しい青年は年齢を訊かれて免許証を求められる、とてもよくできた素晴らしい国だ。ピアスに見えるようなイヤリングをつけて、ほんの少し髪を茶色く染めた。これで、同一人物になれたはずだ。過去の自分と今の自分が同じだというのは、どうにも不可思議な概念だとしか捉えられないけれど、それは僕がひん曲がっているせいなのだろう。
 そうやってリキュールを入手して家で封を切った。結論から言うと、練習しておいてよかった。僕はリキュールの封を切って、怖くなって、しばらくにらめっこをしていた。とりあえず水で割った。割ったというか、リユウ様でさえパーセンテージの計算を面倒がりそうなほど薄く薄くした。100ccに1滴くらいだ。それを、ひとくちだけ飲んだ。
 そのまま更ににらめっこだった。ほんのり甘い。まばたきが多くなる。これが癖になってしまったらどうしよう。僕の舌は甘さに特化した誰かさんとは違うのだけれど、それはきっと酔いだった。なぜなら次第に気分が悪くなってきて、その後、リユウ様にコードを送ってもらわないと朝日が昇るくらいまで寝つけなかったくらいだったからだ。
 恐らく、きちんとした飲み方をしないからいけないのだ。
 そう思って、今度はラムレーズンアイスクリームを買ってきた。年齢は訊かれなかった。
 やはり、きちんとした飲み方をしないからいけないのだ。酔った。
 次に、チーズフォンデュに白ワインを多めに入れてパンを浸した。白ワインはギャン様からいただいた。正しくはラブにねだった。今度衣装屋を紹介することになった。
 間違いなく、きちんとした飲み方をしないせいだ。でも、僕は天地がひっくり返ったとしても、ひとりでこの大きな壁を越えようとしないだろう。あのひとなら、そう表現すれば判ってくれる。そういうものなのかもしれないなあ、を、あのひとの口調で言ってくれるのではなかろうか。
 そう口実をつけて、次に会うときに、あのひとにきちんとした飲み方を教えてもらおう。

Copyright(C)2017 Maga Sashita All rights reserved. designed by flower&clover
inserted by FC2 system